「碧人、わたしね、美冬に悪いと思って、考えないようにしてた。でもそんなの、美冬が喜ぶはずない」

 碧人は黙ってわたしを見ている。わたしは震える手をぎゅっと握りしめて言う。

「だからね、考えるようにしたの。碧人のこと。碧人がわたしのことを、ちゃんと考えてくれてるように」

 少し蒸し暑い風が吹き、わたしの短い髪を揺らす。

「碧人のことはずっと仲のいい幼なじみだと思ってた。いまだってその気持ちは変わらない。でもたぶんそれだけじゃない。碧人はわたしを助けてくれて、すごく救われたし、碧人が笑うとわたしも嬉しい」

 わたしは必死に言葉をつなげる。

「碧人に触れられるとドキドキして、体が熱くなるし、篠宮さんが碧人に告白するって聞いて、胸がずっともやもやした」

 そっと手を伸ばし、碧人のジャージをつかむ。

「碧人に会えないと会いたいって思うし、会いに来てもらえてほんとうに嬉しかった。これからもずっと一緒にいたい。一緒に楽しいことして、笑って、いろんなとこに出かけて、しゃべって、それから、えっと、アイスも一緒に食べたいし、バスケもしたいし、碧人のこと応援したい」

 碧人が目を細めて、わたしを見る。

「なに言ってるかよくわかんなくなってきたけど、とにかくいまそういう気持ちなの。これってもしかして……好き……ってことなのかな?」

 最後のほうは自信がなくて、小声になってしまった。
 すると口元をゆるめた碧人が、耐えきれないようにぷっと噴きだす。