その夜わたしは、ベッドの上に転がって、スマホに入っている写真を眺めた。

 真っ青な空の下、陸上部のみんなと先生で撮った、笑顔の写真。
 ふざけたポーズの一成の顔を見て、くすっと笑いがこぼれる。

 瑛介くんと響ちゃんはすまし顔。美冬はちょっぴり恥ずかしそうで。
 碧人とマキ先生は、思いっきりピースサインで笑っている。

 みんないい顔してるなぁ。これは三年生の陸上大会のあとだ。
 あんまり結果はよくなかったけど、精一杯やったからマキ先生に褒められたし、みんなスッキリした顔をしている。

 わたしも……美冬のとなりで笑っていた。
 この数日後、なにが起きるのかも知らないで。

 わたしはスマホを握りしめ、呼吸を整えるように息を吐く。

 今日までずっと、わたしはこの写真を見ることができなかった。
 悲しくて、つらくて、怖くて、寂しくて……何度も何度も願った。

 目が覚めたらまた、みんなに会えますようにって。
 ぜんぶ夢でありますようにって。

 でも、何度眠って何度目覚めても、みんなは帰ってこなかった。

 みんなのいないこの世界が、まぎれもない現実。
 あたりまえだと思っていた毎日は、もう二度と戻ってこない。

『伝えたいことは伝えられるうちに、ちゃんと伝えようって。いつ、どんなことがあっても、後悔しないように』

 耳に響くのは、鴨ちゃん先生の声。
 静かに目を閉じると、目の前にみんなの姿が浮かんだ。