待ち合わせ場所は、この前篠宮さんと行った、駅前のコーヒーショップ。
 夕方の店は、サラリーマンや学生で賑わっている。

「水原さん」

 窓際のカウンター席に座って、アイスコーヒーをちびちび飲みながら待っていたら、篠宮さんの声が聞こえた。
 部活帰りの篠宮さんは、制服姿だ。

「え、水原さんも制服? 夏休みなのに?」
「ああ、わたしは補習に行ってて」

 苦笑いしてから、篠宮さんに言う。

「ごめん。急に呼びだしちゃって」
「べつにいいけど。話ってなに?」

 篠宮さんがとなりに座った。
 わたしはごくんと唾を飲みこむ。

 言いたいことは考えてきたのに、なかなか声にならない。
 篠宮さんが不審な目で、わたしを見ている。

「え、えっと、碧人のことなんだけどっ!」

 言った。まだ最初のひと言だけど。やっと声に出せた。
 わたしはアイスコーヒーのカップを両手で包み、言葉をつなげる。

「わたし、明日の競技前に、碧人にいまの気持ちを伝えようと思ってる」

 篠宮さんが顔をしかめてつぶやく。

「それって……告白するってこと?」
「告白っていうか……とにかくいまわたしが思ってることを、ちゃんと碧人に伝えたくて……」

 首をかしげながら、篠宮さんが言った。

「よくわかんないけど……水原さんも好きなんでしょ? 碧人くんのこと」

 心臓がまた、大きく跳ねる。

 好きなのかと言われても、実はよくわからなかった。
 でもとにかくいまの気持ちを、碧人に伝えたかったんだ。

 篠宮さんはあきれたようにわたしを見たあと、コーヒーをストローで吸いこみ、ため息交じりにつぶやく。