「どうみてもお姉ちゃんと碧人くんって、ずっと前から両想いっぽいんですけど。なんで素直にならないの? お姉ちゃん、碧人くんが引っ越してからずっと、死んだ魚みたいな顔してたくせに」
「し、死んだ魚って……」
「でも最近は、赤くなったり青くなったり、人間らしくなってきたね?」

 万緒がわたしの顔をのぞきこみ、にこっと笑う。わたしは顔をしかめて、指をさす。

「ねぇ、そのアイス、わたしのじゃない?」

 万緒はぺろっと舌を出す。

「あんたねー! ひとのアイス、勝手に食べるなって言ってるじゃん!」
「キャー! やめてー! きゃははははー!」

 生意気な妹にはくすぐりの刑だ。

 万緒の笑い声を聞きながら、顔を上げる。
 ベランダから見えるのは、青い夏空。

 美冬――心のなかで、そっとつぶやく。

 美冬もずっと、こんな気持ちを抱えていたの?