結局その夜、足が腫れてしまったわたしは、お父さんの車で病院に行き、全治一瞬間の捻挫と診断された。

 情けない。恥ずかしすぎて、誰にも言いたくない。

「はぁ……」
「夏瑚。学校には連絡しておいたから。しばらく、補習はお休みしますって」
「うん……」

 わたしはベランダに腰掛け、花に水をあげていた。いくつかの鉢に分けて植えたひまわりは、黄色い花を咲かせている。

 今日こそ、鴨ちゃん先生に渡したかったのにな。この鉢なんか、いまがちょうど見ごろなのに。
 鴨ちゃん先生の嬉しそうな顔を想像して、またため息が漏れる。

「はぁ……」
「お姉ちゃんどうしたの? ため息ばっかりついて」

 万緒がアイスを食べながら、わたしのとなりに座る。

「もしかして、恋の悩みとか?」
「バカ、ちがうって。そんなんじゃないよ」
「ほんとに碧人くんとつきあってないの? お姉ちゃん」

 途端にわたしの顔が熱くなる。

「つ、つきあってるわけないでしょ!」
「ほんと、素直じゃないなぁ、お姉ちゃんは。いつまでも幼なじみでいましょうとか、いられるわけないじゃん」
「はぁ?」

 顔をしかめたわたしの前で、アイスをひと口かじった万緒が、大人びた表情で言う。