薄暗い校舎を一歩出ると、真夏の日差しが頭の上から照りつけてきた。わたしは手で、伸びた前髪を分けながら、空を見上げる。

 雲ひとつない、青い空。
 あんまり眩しくて目をそらしたら、校舎の脇の花壇に、大きなひまわりが咲いているのに気づいた。

「こんなところに咲いてたんだぁ」

 わたしは思わず駆け寄った。太い茎のひまわりは、黄色い花を咲かせて、まっすぐ空に向かって伸びている。

 そしてわたしは、職員室で咲いていた、小さなひまわりを思い出す。

「どうしたの? これ」

 中学二年生のころ、クラスで集めたプリントを持ってマキ先生の席に行ったら、机の上にひまわりの鉢が置いてあった。

『ああ、かわいいだろ? ひまわりってさ、真夏の太陽の下でイキイキ咲いてるのもいいけど、こういうのも癒されるよな』

 マキ先生の口からお花の話題が出るなんて、ちょっと意外だった。

「そうかなぁ、たしかにかわいいけどね。わたしはでっかいひまわりのほうが、夏っぽくて好きだなぁ」

 マキ先生は、あははっと声を上げて笑った。

『そうだな。夏瑚はでっかいひまわりが似合うよな。素直にまっすぐ、太陽に向かってぐんぐん伸びていくみたいな?』
「マキ先生だって、ひまわりが似合うよ」

 真夏の太陽の下で、さわやかに笑っているような。