「水原さんからわたしに報告は?」
「は? 報告?」
「碧人くんとなにかあったんじゃないの? もしかしてつきあうことになった?」

 篠宮さんがじりじりと迫ってくる。わたしはあの日のことを思い出し、また恥ずかしくなる。

「ああっ、赤くなった! やっぱり碧人くんとなにかあったんでしょ!」
「なにもないよ」
「嘘! ぜったいなにかあった!」
「あるわけないでしょ! 碧人はわたしの親友の好きなひとなんだから!」

 言ってからハッと口をふさぐ。篠宮さんが顔をしかめる。
 微妙な空気が流れたあと、篠宮さんの声が聞こえた。

「もしかして水原さん、その友だちに遠慮して、碧人くんとつきあわないつもりなの?」

 わたしはぎゅっと唇を噛む。

「恋愛より友情を優先するタイプ? へぇ……」

 わたしは逃げるように歩きだす。篠宮さんが自転車を押しながらついてくる。