学校にいる間も、雨は降り続いていた。

 保健室の窓を、雨のしずくがつうっと流れる。
 わたしは窓のそばに腰かけて、降り続く雨をぼんやりと眺めた。

「よく降るなぁ……」

 グラウンドがぐしゃぐしゃにぬかるんでいる。今日も外での部活動はできないだろう。

 わたしはポケットからスマホを取りだし、グループ名をタップする。
 『元気!?』の猫スタンプのあと、静かな保健室で文字を打つ。

【今日はきょうちゃんの嫌いな雨だねー。グラウンド使えないね】

 保健室前の廊下を通り過ぎていく、男子生徒たちの騒ぎ声が聞こえる。

【でもぶちょーは喜んでるかな? 筋トレ大好き人間だもんねー】

 ふふっと口元をゆるめながら文字を送る。
 廊下が静かになると、雨の音がまたしとしとと響く。

「あら、水原さん。まだいたの?」

 保健室の引き戸が開き、白衣の鴨ちゃん先生が入ってきた。

「まだいたのって、ヒドイなぁ」
「だってもう放課後だよ。そろそろ家に帰りなさい」

 鴨ちゃん先生はわたしを見ないまま、机の上にどさっとプリントを置く。
 保健室でだらだらしているうちに、今日も一日が終わってしまった。