帰りの電車のなか、碧人はわたしの肩に寄りかかり、目を閉じていた。
わたしも電車の揺れに身を任せながら、そっと碧人の体にもたれる。
静かに目を閉じると、誰かの背中が浮かんできた。
「美冬?」
ゆっくりと振り返ってわたしを見たのは、美冬だった。
大きくて丸い目が、わたしのことを見つめている。
「美冬! こんなところにいたの?」
わたしは走って美冬に近づく。なのに美冬の姿は遠ざかっていく。
なんで? どうしてわたしは美冬のところへ行けないの?
『夏瑚』
美冬の声が聞こえた。姿は遠いのに、声はすごく近い。
『ほんとうにそれでいいの?』
「え?」
『碧人くんのこと、ほんとうにそれでいいの?』
体がひやっと冷える。
「な、なに言ってるの? わたしは碧人のことなんかべつに……」
『わたし、夏瑚のほんとうの気持ちを知りたい』
美冬の顔が見えない。笑っているのか、泣いているのか、わからない。
『ねぇ、夏瑚。ほんとうの気持ちを聞かせて?』
「美冬っ!」
ハッと目を開ける。わたしは電車に揺られている。となりを見ると、碧人がわたしの肩にもたれて眠っていた。
わたしは膝の上の手を、ぎゅっと握りしめる。
これでいいんだ。わたしは間違っていない。
碧人はこれからもずっと、わたしの幼なじみ。
これからもずっと、美冬の好きなひと。
わたしも電車の揺れに身を任せながら、そっと碧人の体にもたれる。
静かに目を閉じると、誰かの背中が浮かんできた。
「美冬?」
ゆっくりと振り返ってわたしを見たのは、美冬だった。
大きくて丸い目が、わたしのことを見つめている。
「美冬! こんなところにいたの?」
わたしは走って美冬に近づく。なのに美冬の姿は遠ざかっていく。
なんで? どうしてわたしは美冬のところへ行けないの?
『夏瑚』
美冬の声が聞こえた。姿は遠いのに、声はすごく近い。
『ほんとうにそれでいいの?』
「え?」
『碧人くんのこと、ほんとうにそれでいいの?』
体がひやっと冷える。
「な、なに言ってるの? わたしは碧人のことなんかべつに……」
『わたし、夏瑚のほんとうの気持ちを知りたい』
美冬の顔が見えない。笑っているのか、泣いているのか、わからない。
『ねぇ、夏瑚。ほんとうの気持ちを聞かせて?』
「美冬っ!」
ハッと目を開ける。わたしは電車に揺られている。となりを見ると、碧人がわたしの肩にもたれて眠っていた。
わたしは膝の上の手を、ぎゅっと握りしめる。
これでいいんだ。わたしは間違っていない。
碧人はこれからもずっと、わたしの幼なじみ。
これからもずっと、美冬の好きなひと。