そのままふたり、雨のなかを黙って歩いた。
 気づけば傘を叩く雨音が小さくなり、空が少しずつ明るくなってきた。

「あそこじゃないか? 総合公園」

 碧人が指さした先に、広い駐車場が見える。総合公園の駐車場だ。

「ほんとだ。競技場はあの公園のなかだね」
「行ってみよう」

 車のほとんど停まっていない駐車場を突っ切り、緑に囲まれた公園に入る。広々とした公園のなかには、野球場やアスレチック施設などもあった。
 天気が良ければ家族連れで賑わいそうな場所だが、大雨の降った今日は、まったくひと気がない。

 芝生広場を横目に見ながら、ぬかるんだ土の上を進んでいくと、フェンスの向こうに競技場が見えた。

「やっと着いた」

 碧人が立ち止まってつぶやく。

「うん。やっと着いた」

 あの夏、わたしたちが来るはずだった場所。
 陸上部のみんなと先生と一緒に。
 ここまで来るのに、ずいぶん時間がかかってしまった。

 気づけば雨が上がっていた。ぽたぽたと雨水を垂らしながら、透明の傘を閉じたとき、碧人が言った。