「うわ、すっげー雨……」

 競技場のある駅で降りたわたしたちは、改札を出て唖然と空を見上げた。
 真っ暗な空からは、土砂降りの雨が降っている。

 天気予報、ちゃんと聞いてくればよかったな。傘なんて、持ってこなかった。

「ここから歩くんだっけ?」
「うん。徒歩二十分って書いてある……」

 スマホの文字を読み上げたわたしは、降りしきる雨を見てため息をつく。
 タクシーから降りたサラリーマンが、バッグを頭にのせ、走って駅舎に駆け込んできた。

「きっとわたしたちの行いが、悪すぎたんだね」
「そういえばマキ先生がよく言ってたよな。大会が雨になると、『おまえたちの行いが悪いからだ!』って」
「あー、そういえば言ってた」

 わたしたちは顔を見合わせ、苦笑いをした。

「でもあの日は、よく晴れてたんだけどね」

 空を見上げてつぶやく。
 高速を走るバスのなか、美冬の向こうに見えたのは、真夏の青い空だった。

「とりあえずおれ、コンビニで傘買ってくる」

 その先を思い出しそうになったわたしの耳に、碧人の声が聞こえた。
 碧人は雨のなかに、足を踏みだす。

「あ、待って。わたしも行く!」

 走りだした碧人を追いかけ、わたしも水たまりを踏みつけた。