「雨だ……」

 そう言いながらとなりを見ると、碧人も窓の外を見ていた。
 わたしは口を閉じ、前を向く。碧人の肩がわたしの肩に、ほんの少しぶつかる。

『碧人くんに……好きだって』

 美冬の声が頭に響き、ぎゅっと目を閉じる。

『それからずっと、碧人くんのことが気になってた』

 次に聞こえてきたのは、篠宮さんの声。

 碧人って、こんなにモテたっけ……

 幼いころからおとなりに住んでいた、泣き虫で寂しがり屋の男の子。
 だけど足がすごく速くて、走っている姿がカッコよくて、いつもにこにこ笑っていて、意外と真面目で、ときどき優しくて……

『碧人こそ……好きなひととか、いなかったの?』

 あの日聞いた、わたしの言葉。

『いたよ……好きなひと』

 碧人はわたしにそう言った。

『いまも……いるよ』

 肩に碧人のぬくもりを感じながら、目を開ける。

 碧人の好きなひとって……
 考えかけてやめた。

 碧人はこれからもずっと、『わたしの親友の好きなひと』なんだから。