しとしと、しとしと……

 六月に入ってから、雨の日が多い。
 わたしはマンションのベランダにしゃがみこみ、並んだ鉢植えを眺める。

 四月、わたしは種から花を育てはじめた。こんなことするのは生まれてはじめてだったけど、ちゃんと芽は出て、ぐんぐん葉が増えた。

「あんた、ちゃんと成長してるんだねぇ?」

 わたしは緑の葉を、指先でちょんっとつつく。

 不思議。あんな小さな種から、こんな葉っぱが出てくるなんて。
 生きてるんだなぁ。植物ってやつも。
 成長日記を書いて、生物の先生に見せたら、成績上げてくれないかな?

「夏瑚ー、なにやってるの? 遅刻するわよー」

 部屋のなかから、お母さんの声が聞こえた。

「はぁい」

 ゆっくりと立ち上がったわたしは、無言の鉢植えに向かって、「いってきます」とつぶやいた。