部員たちが位置につく。わたしはフェンスを握りしめる。
 ピッとホイッスルが鳴って、部員たちが一斉に走り出した。
 わたしはフェンスに張りつき、目を凝らす。

「あっ……」

 スタートしてすぐに、碧人が立ち止まってしまった。
 他の部員たちが100メートルを駆け抜け、ゴールする。

 残された碧人はひとりうつむき、両手を膝にのせる。そして深く息を吐いたあと、静かに空を見上げた。

 鈍くくすんだ空の色。碧人はあの空を見ながら、なにを考えているんだろう。

 コースから離れた碧人に、篠宮さんが駆け寄ってきた。なにか話しかけられた碧人は、小さくうなずくと、グラウンドからいなくなった。

 わたしはフェンスから手を離し、速足で校門のほうへ回った。