翌日、学校が休みの土曜日。わたしは西高校の前に来ていた。

「結局、来ちゃった……」

 どんより曇った空の下に建つ、見知らぬ校舎を眺めながらつぶやく。

 何度も開いた碧人のアカウントには、結局メッセージを送れなかった。
 だってなんて言ったらいいのかわからない。でも胸のもやもやはおさまらなくて、気づけばここに向かっていたんだ。

 フェンス越しに、グラウンドをのぞき見した。篠宮さんの言ったとおり、陸上部が練習をしている。さすが強豪校だけあって、うちの学校より部員が多い。

 わたしは目を凝らし、グラウンドを見つめた。後ろを通りすぎる西高生が、不思議そうにわたしを見ているけど、気にしてなんかいられない。

「あ、いた……」

 スタートラインに向かう陸上部員のなかに、碧人の姿を見つけた。
 少し茶色い髪、あいかわらず男子にしては小柄だけど、中学のころより体が引き締まったように感じる。

「碧人……」

 碧人が走る姿を見るのは、いつぶりだろう。

 わたしはフェンスに手をかける。
 スタートラインに立った碧人が、100メートル先のゴールをまっすぐ見つめる。

 なんだかわたしまでドキドキしてきた。
 緊張と同時に沸き上がってくる、高揚感を思い出す。