「……そうですね」

 わたしは慎重に話を合わせる。

「生まれてからロボットがいたんで」
「やっぱそうか。俺を見ても怖がらないわけだ」
「ああ、人じゃないんですね」
「アンドロイドだ。旧式だけどな」

 男は名前を永遠《トワ》といった。言葉は流暢だけど、確かに体の動きがカクカクしていて、滑らかでない。

「東京に、『列車』が来てくれると思うか?」
「……そういう連絡でしたけど」

 訝りながらも、わたしは男に合わせた。
 彼は乾いた自嘲的な笑いを浮かべる。

「俺は嘘だと思うね。来るとしても、オンボロ列車だ。最新のじゃない。命の保障なんかあるかよ。くそ、日本なんかに生まれなきゃよかった」

 男はこの世を恨んでいるらしかった。言葉の端々に、人間や社会に対する厭世的な視点がうかがえる。

「あなたは、何で東京を目指しているんですか。『列車』に乗りたいんですよね?」

 わたしはおばあちゃんを隠しながら、男に聞く。ほかにもぽつぽつと、東京に向かっているらしい人影が増えている。