上を向くと、真っ青な空だけがある。ぎらつく太陽のきらめきがわたしをあぶりだそうとしている。ずっと歩いて、果てしなく歩き続けて、それなのに自分がこの世に生まれてから二十一年しか経ってない。あとどこまで歩くというのだろう。なぜ一歩ずつ踏み出す足が、こんなにも重いのだろう。そんな心の状態で、なぜわたしは、頭上できらめく日射しと抜けるように広い空を、綺麗だと感じているのか。こんな、「自然が美しいだけ」のどうしようもない事実を、感傷的に受け止めているのか。自分がバカらしくて、でも隣におばあちゃんがいて、笑いたいのか泣きたいのかも判断できず、どうにかなりそうだった。

「あんたらも東京行き?」

 後ろから声をかけられた。
 振り向くと、痩せた男だった。薄汚れた服を着ている、年齢不詳の男。
 わたしはとっさにおばあちゃんの手を引き、「そちらも?」と先を促した。

「電車がまだ動いてた時代を知ってるか?」
「ええ、まあ」

 男はわたしたちと話したいようで、疲れた表情を浮かべながらもどこか嬉しそうに、距離を縮めてきた。

「あんたら、AI世代だろ? 特に若いの。人が機械を動かしてた頃をもう知らないだろ?」