年季の入った四畳半の畳は枯れた匂いがする。おばあちゃんはもうそんなに出歩けない。まだ自力で起き上がれるけど、わたしの補助がないと買い物に行くのも難しい。
 ただでさえ悪い目つきをさらに眇めて、おばあちゃんはこっちをきつくにらむ。

「若い娘がタバコなんて」
「それ、女性差別ですから。未成年が吸ってるんじゃないんだから別にいいでしょ」
「誰に似たんだか」
「絶対あんただって」

 ふんっと鼻を鳴らして、おばあちゃんは動かすのがつらそうな体を横に向ける。
 状況は刻一刻と悪くなっていた。地球はもうもたない。みんなが感づいていることだ。海水の温度の上がり方が尋常じゃない。南の島は多くが水没してしまった。暑い。タバコに逃げないとやってられない。

「政府からお達しがあったの」

 おばあちゃんの肩がぴくりと動いた。

「うちのところに『列車』が来るのは十二月だって」

 しばらく沈黙が続いた。

「……ふうん。年内に到着するとは思わなかった」
「そうだね」