何かが急に収まって、静まった。暴動のように興奮したその場の空気の高まりは、突如ぴたりと止んだ。
 不気味なほどの静寂。
 気が遠くなるような空気の重さだった。
 恐る恐る目を開ける。
 そこには倒れ伏して動かなくなった人たちがいた。
 永遠を見つけた。
 長い髪の、痩せっぽっちのひょろいアンドロイド。
 わずかに体が動いていた。
 まだ生きてる。わたしたちは思わず駆け寄った。

「永遠……!」

 うつ伏せに倒れている永遠を抱き起こそうとして、わたしは動きを止めた。
 彼が泣いていた。あきらめたように笑いながら、泣いていた。壊れているんだ。さっきの衝撃で、頭を強く打ったのだろう。人工の脳の部分がショートしてしまったのか。たった数秒にも満たないあの時間、永遠の命は散った。

「ひかり、早苗」

 永遠の声がした。焦点の合わない目で、永遠がしゃべっていた。

「ひかり……。早苗……。ひかり……と、早苗……。ひかりと、早苗……。へへ…………」

 永遠はわたしたちの名をしばらく呼び続けていた。
 そして、ふっと電池が消えたみたいに、動かなくなった。