コンテストが終了して冷めやらない熱気の中、帰宅していく生徒たち。
 結論から言うと、綺原さんがベスト三位、二位は人気アニメのコスプレをした二年の男子。
 グランプリを獲ったのは、顔から肩まで(うろこ)のペイントを(ほどこ)し、編み込んだ長い髪を蛇に見立てるといったメドゥーサに扮した三年の女子だった。睨まれたら石にされそうな迫力が凄まじかった。

 辺りはすっかり薄暗くなり、制服に着替えた苗木、綺原さんと一緒に最寄駅へ向かう。

「グランプリだった子、美術部みたいね」

 コンテストが始まる前、日南先生と部員たちが鱗のペイントをしてるところを見たようだ。

「あれ、すごかったよな。出てきた瞬間、鳥肌たったぜ。ああ……でも、ほら、なんだ」

 何か言いたそうにして、苗木が言葉を詰まらせる。おおよそ検討は付くから、頑張れと心の中で呟くのだけど、なかなか進まない。

「綺原の着物、あれは自前か? わざわざ買ったのか?」
「家のものを借りてきたのよ」
「綺原ん家って、まさかお嬢か何かか?」
「そっち系みたいな言い方しないでくれる? それに、お嬢様でもなんでもないから」
「そうか、嬢令(じょうれい)ならもっとスゲェ高校通うよな」
「……条例……令嬢ね。たしかに、どこかのご令嬢が苗木の隣を歩く想像は出来ないわね」

 相変わらずな掛け合いに、ぷっと吹き出してしまう。
 彼女には変な目で見られた。でもそれが心地良くて、この関係がこのまま続けばいい。
 明日の本祭も必ず成功する。未来は僕の知らない違うものになっているのだと、信じて疑わなかった。