消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる

 周りは黒い絵の具がこぼれたように闇の色へと姿を変えた。
 キラキラと小さく輝く星屑に紛れて宙を漂う。
 すぐ近くにいるのに、手を伸ばしても蓬に触れることが出来ない。どうしてそんなに遠いんだ。

 必死に掴もうとする指がすり抜けて、ようやく気付く。自分の足元、そして彼女の肩と腰に黒い影があることに。

「どうして僕たちの邪魔をする? この子には俺が必要だってこと、よく分かっただろ?」

 暗闇から姿を現したのは、彼女をがんじがらめにして腕を回す皆川だった。

「 この子は可哀想な子なんだ。進路のことで母親とも上手くいっていない。家に逃げ場もない。今、この子の救いは俺に依存することだけだ。それをお前が奪うのか?」
「梵くん、助けて……」

 皆川の腕が、徐々に蓬を締め付けていく。このままだと、彼女は力尽きてしまうだろう。

 涙を溜めながら息をする蓬は、抵抗しようとしていない。
 まだ、彼女は彷徨(さまよ)っている。頭では分かっていながら、心の奥底で皆川を信じる自分を捨て切れていない。

「蓬、惑わされてはダメだ! そいつの優しさは、全て自分の至福のためのものだ! ここで断ち切らないと君は一生後悔する! 自分で……、終わらせるんだ!」
「でも……、怖い。私、これから、どうしたらいいの?」
「僕がいる! 自分を信じて、蓬……」

 胸のあたりから小さな光が現れた。
 それは鼓動を刻むようにゆっくりと大きくなって、やがて僕らを包み込むようにして暗闇が消えた。