消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる

「……さっきのって、親にバレたの?」
「私と先生の、その……キスしてる画像が、知らないアドレスからお母さんのスマホに送られて来たの。別れないと学校にバラすって。秘密で付き合ってたから、お母さんはもうカンカンで」
「……皆川先生には相談した?」

 小さく首を横に振って。

「言えるわけないよ。面倒とか、(わずら)わしいって思われたくない」

 皆川から嫌われることに対して、彼女は恐怖に近いものを抱いていた。どうにかして繋ぎ止めていたいという気持ちが強く感じられて。
 だから、皆川の顔色を伺って好かれるためだけ必死に行動している。本心を見失いながら、正常な心と(ゆが)んだ欲望との狭間で苦しんでいる。

「いつも先生は、君が一番だよって言ってくれるから。ほんとはダメだと分かってても、二人の未来を想像しちゃうの。こんな子ども相手に、本気になるわけないのにね」

 穏やかな波の音が消えて、僕たちは家の中にいた。突然変わった場面はリビングだろうか。見慣れないオムツやお尻拭きが置かれている。
 どこなのか分からない場所で、お互いに目を合わせた。それは蓬も同じ様子だった。

 赤ん坊の鳴き声が聞こえて、後ろから二十代前半くらいの女性がやってきた。ミルクを冷ましながらベビーベッドの赤ん坊を抱き抱えると、母親らしき女性は笑顔で話しかける。

「いっぱい飲んで大きくなってね」

 一連の動作を、ただ茫然(ぼうぜん)と突っ立って眺めるしかなかった。あの時と同じ、屋上で蓬と皆川が会っていた時と同様に、僕らの姿は見えていないようだ。

「なに、これ。手も足も動かない」

 彼女の声に反応して、体を動かそうと試みるけど出来ない。