今年も連休明けから、六月上旬の土曜日に開催される結芽岬高等学校の学園祭、通称『ゆめみ祭』の準備が始まった。
毎年前日に前夜祭と、ゆめみ祭の夜には後夜祭が行われて、全てのイベントが生徒会執行部に一任されている。
前夜祭は仮装大会、後夜祭では花火の打ち上げが定番になっていて、それは今年も話し合いをしなくても分かっていることだった。現に満場一致で決定した過去を知っていることもあり、僕としてはこの作業が無駄な時間に思えて仕方ない。
黒板の前に立ち、クラスメイトに確認の言葉を繰り返す。早く終わらないかと面倒くさそうな表情、眠そうな目、隠れてスマホを触る人や隣と雑談する人。以前見た光景とさほど変わらない。
生徒会の冊子に目を向けて、一呼吸置く。
「では、今回の前夜祭も仮装……」
話をまとめようとした時、小さな声が上がった。
「あの、仮装大会なんて、どうかな?」
この人は今更何を言っているんだ? 話を聞いていないから、あたかも自分が提案したような発言が出来るんだ。
「それは今……」
視線を上げたとたんに、体は氷のように固まって動けなくなった。呼吸の仕方さえ危うくなる。
瞬きをするのが精一杯なのに、目の前にいる彼女を瞬ぎもせず見つめて。
「衣装も自分たちで用意して、コンテストにしたら面白いんじゃないかな!」
好奇心に溢れた瞳を輝かせるのは、髪をさらっとなびかせた蓬だった。
どうして、ここに?
周りに目を配ると、どれも知らない顔ばかりが並んでいる。また夢の中に入り込んでしまったのか。
「非日常を味わえて、楽しそうだな」「仮装なんて恥ずかしいよ」「結構盛り上がるかも」というような声が教室を飛び交っていく。
落ち着け、これは僕の見ている幻想だ。
毎年前日に前夜祭と、ゆめみ祭の夜には後夜祭が行われて、全てのイベントが生徒会執行部に一任されている。
前夜祭は仮装大会、後夜祭では花火の打ち上げが定番になっていて、それは今年も話し合いをしなくても分かっていることだった。現に満場一致で決定した過去を知っていることもあり、僕としてはこの作業が無駄な時間に思えて仕方ない。
黒板の前に立ち、クラスメイトに確認の言葉を繰り返す。早く終わらないかと面倒くさそうな表情、眠そうな目、隠れてスマホを触る人や隣と雑談する人。以前見た光景とさほど変わらない。
生徒会の冊子に目を向けて、一呼吸置く。
「では、今回の前夜祭も仮装……」
話をまとめようとした時、小さな声が上がった。
「あの、仮装大会なんて、どうかな?」
この人は今更何を言っているんだ? 話を聞いていないから、あたかも自分が提案したような発言が出来るんだ。
「それは今……」
視線を上げたとたんに、体は氷のように固まって動けなくなった。呼吸の仕方さえ危うくなる。
瞬きをするのが精一杯なのに、目の前にいる彼女を瞬ぎもせず見つめて。
「衣装も自分たちで用意して、コンテストにしたら面白いんじゃないかな!」
好奇心に溢れた瞳を輝かせるのは、髪をさらっとなびかせた蓬だった。
どうして、ここに?
周りに目を配ると、どれも知らない顔ばかりが並んでいる。また夢の中に入り込んでしまったのか。
「非日常を味わえて、楽しそうだな」「仮装なんて恥ずかしいよ」「結構盛り上がるかも」というような声が教室を飛び交っていく。
落ち着け、これは僕の見ている幻想だ。



