「はっきりとした意識の中で見る夢。綺原さん、前にそう言ってたよね」
「あら、そんなこと言ったかしら」
「実は九十歳のお婆ちゃんがタイムリープしてる?」
「冗談よ、覚えてる。ちゃんと十七歳の女子高生ですから」
「それなら良かった」
少し唇を尖らせて、ベッドの傍に腰を下ろす綺原さんに、僕は質問を続ける。
「夢の中で現実が起こってる。知らない人なんだけど確かに存在してて、僕はその人と夢の中で会ってるんだ。実際に」
「梵くんって、結構ロマンチストなのね」
「多分、綺原さんも同じような夢を見てるんじゃないかと思って」
穏やかだった目が閉じられて、長いため息を吐くように彼女の瞳が開かれた。
「私のはそんな素敵なものじゃない。現実よりもっと現実的な夢よ。見たくもない未来のね」
「未来?」
「とっても残酷でしょ? だって、好きな人が違う誰かといる光景を延々《えんえん》と見せられているんだもの」
綺原さんって、好きな人がいたのか。そんなことを口に出来るはずもなく、
「現実でないと割り切れるほど、夢であってくれたらね」
緩やかに口角を上げる仕草は、表情に乏しい彼女に似合わず無理をしているように感じた。
なんとなく、その感情が分かる気がする。蓬と男性教師を背後から眺めていた僕が蘇って、煙のように消えていく。
誰かを想っている時の顔に似ている。
「不思議な夢を見るようになったのは、ちょうどタイムリープが起こる前日。それか直前だと思う」
「同じね。私も夢から覚めたら時間が巻き戻っていた。それぞれの見ている夢と、何か関係があるのかしら」
「分からない。でも可能性はある。だから、これからノートかスマホに、夢の内容を記録として残しておけないかな」
無意味なことかもしれないけど、役立つ時があるかもしれない。
「あら、そんなこと言ったかしら」
「実は九十歳のお婆ちゃんがタイムリープしてる?」
「冗談よ、覚えてる。ちゃんと十七歳の女子高生ですから」
「それなら良かった」
少し唇を尖らせて、ベッドの傍に腰を下ろす綺原さんに、僕は質問を続ける。
「夢の中で現実が起こってる。知らない人なんだけど確かに存在してて、僕はその人と夢の中で会ってるんだ。実際に」
「梵くんって、結構ロマンチストなのね」
「多分、綺原さんも同じような夢を見てるんじゃないかと思って」
穏やかだった目が閉じられて、長いため息を吐くように彼女の瞳が開かれた。
「私のはそんな素敵なものじゃない。現実よりもっと現実的な夢よ。見たくもない未来のね」
「未来?」
「とっても残酷でしょ? だって、好きな人が違う誰かといる光景を延々《えんえん》と見せられているんだもの」
綺原さんって、好きな人がいたのか。そんなことを口に出来るはずもなく、
「現実でないと割り切れるほど、夢であってくれたらね」
緩やかに口角を上げる仕草は、表情に乏しい彼女に似合わず無理をしているように感じた。
なんとなく、その感情が分かる気がする。蓬と男性教師を背後から眺めていた僕が蘇って、煙のように消えていく。
誰かを想っている時の顔に似ている。
「不思議な夢を見るようになったのは、ちょうどタイムリープが起こる前日。それか直前だと思う」
「同じね。私も夢から覚めたら時間が巻き戻っていた。それぞれの見ている夢と、何か関係があるのかしら」
「分からない。でも可能性はある。だから、これからノートかスマホに、夢の内容を記録として残しておけないかな」
無意味なことかもしれないけど、役立つ時があるかもしれない。



