夢日記となるものをつけ始めて、二週間が過ぎた。
 文字にするのは苦しいけれど、新しく彼らとの思い出が増えていくたびに、頬がほころぶ。

 五月の連休が明けて、彼から不思議な夢を見ていると話を受けた。
 なんでも、知らない女の子と夢の中で会っていると言う。それは私なのに、と嫉妬するのは私らしくない。

 夢を通して繋がるには、いくつかの条件を満たしていなければ起こらない。そのうちのひとつに、知っている者が含まれる。
 だから、おおよその見当は付いていた。その子は高校生だと言うから断言は出来ないけど、おそらくは日南菫。

「……梵くんが、止めたいんじゃなくって?」

 良くないことをしている。
 その濁した言い方は、不倫を指しているのかもしれない。以前、彼女を襲おうとした皆川という男は、高校の教師をしていた。
 妻と子どもがいながら、生徒と良からぬ関係にあったらしい。

「夢に関わらない方が身のためだと思うけど。もしも、本当に現実(ここ)と繋がっているのだとしたら、戻ったときに良くない今になっている可能性だってあるのよ」

 あなたの未来を救いたい。
 願うばかりで、何をどうしたらいいのかなんて、何も分からない。
 でも、日南菫と深く関わらなければ、この人が命を落とすことはない。