目が覚めたら、部屋のベッドで眠っていた。体に異変はなく、慌てて開けたカーテンの向こうには、黒とは無縁の青空が広がっていた。

 あの衝撃的な日から、六日が経つ。地球が滅亡するかのような光景は、誰も覚えていないらしい。それどころか、そんなことはなかったように、みんな普通に生活している。
 夢でも見ていたんじゃないかと、苗木に笑われた。

 教室から見る窓の景色は、以前と変わらないのに、ぽっかりと空いた前の席が不自然さを際立てている。
 元々、この場所には誰もいなかった。クラスメイトを始め、日南先生までがそう言うのだから、そうなのだろう。
 それなのに、大切な何かが足りないと心が訴えているようで、苺のないショートケーキみたいに毎日が味気なく感じる。

 窓枠に腰を下ろして、いつものように苗木がクリームパンを食べ始めた。校庭を眺める視線の先には、いつも──。

「苗木って、よく外見てるよね。何見てるの?」

 彼はよく、こんな目をする。心がぽっかりくり抜かれる前と同じ、優しくて()がれるような眼差しだ。
 窓ガラスに身を乗り出してみるけど、大きな樹木の下には誰もいない。

「何もねぇよ。でも、なんか見ちまうんだよな。自然と惹きつけられるっていうか」

 僕たちの中で、たしかに誰かが存在していた。大切にしなければならなかった人が、忘れたくない人がいたはずなんだ。