九月十六日まで、あと一週間。今日の夜から未明にかけて、この辺りを台風が直撃すると言われている。
今にも雨が降り出しそうな天候。呼び出されて、僕は屋上へ向かった。
うろこ雲の下で、髪をなびかせる日南先生がゆっくりとこちらを見る。
「すごい雲だね。これって、台風雲ってやつかな」
「……たぶん」
落ち着かない胸を抑えながら、彼女の隣に立つ。
無数の小さな白い塊が、絨毯のように敷き詰められている。
あの日、夢で見た虹の雨の空と似ている気がした。
「この間はごめんね。私、どうかしてたと言うか」
「えっ、ああ……僕の方こそ、すみませんでした」
なんのことだろうと考えながら、ワンテンポ遅れて反応する。車で送ってもらった日のことを言っているのだろう。
塗装の剥がれかけた手すりに触れて、遠くを眺める。ざわざわと揺れる木の下に、誰かが入っていくのが見えた。
朝より、風が強くなってきている。風の音で、日南先生の声が遠退いて感じた。
彼女は、なんと返事をするのだろう。
「……直江くん、聞いてる?」
「あっ、すみません。なんでしたっけ」
「今違うこと考えてたでしょ」
「……えっ」
「先生には全部お見通しよ? 心ここに在らずって感じ。さっきから校庭を気にしてるけど、何かあったの?」
再び視線を下げると、木の陰からさっきの男子生徒が出てきた。あの茶色の頭髪は、苗木だ。
今にも雨が降り出しそうな天候。呼び出されて、僕は屋上へ向かった。
うろこ雲の下で、髪をなびかせる日南先生がゆっくりとこちらを見る。
「すごい雲だね。これって、台風雲ってやつかな」
「……たぶん」
落ち着かない胸を抑えながら、彼女の隣に立つ。
無数の小さな白い塊が、絨毯のように敷き詰められている。
あの日、夢で見た虹の雨の空と似ている気がした。
「この間はごめんね。私、どうかしてたと言うか」
「えっ、ああ……僕の方こそ、すみませんでした」
なんのことだろうと考えながら、ワンテンポ遅れて反応する。車で送ってもらった日のことを言っているのだろう。
塗装の剥がれかけた手すりに触れて、遠くを眺める。ざわざわと揺れる木の下に、誰かが入っていくのが見えた。
朝より、風が強くなってきている。風の音で、日南先生の声が遠退いて感じた。
彼女は、なんと返事をするのだろう。
「……直江くん、聞いてる?」
「あっ、すみません。なんでしたっけ」
「今違うこと考えてたでしょ」
「……えっ」
「先生には全部お見通しよ? 心ここに在らずって感じ。さっきから校庭を気にしてるけど、何かあったの?」
再び視線を下げると、木の陰からさっきの男子生徒が出てきた。あの茶色の頭髪は、苗木だ。



