表札を確認して、インターフォンを鳴らす。
すぐに返事がして、黒のノースリーブに茶色のスカート姿で日南先生が顔を出した。学校での雰囲気と少し違って、より大人の女性が漂っている。
リビングに通されて、グラスに注がれた氷入りのオレンジジュースが出された。
「菫先生って、実家から通勤してたんですね」
「ずっとここに住んでるの。結芽高に近いから、一人暮らしするのはもったいなくて。母と二人で住むには、広すぎるんだけどね」
視線を向けた写真立てには、幼い女の子と父親らしき若い男性が頬を寄せ合い笑っている。
八月十八日は、実際に日南菫が亡くなった日だ。こうして彼女と会っていると、冷たい人形のように横たわっていた姿は夢だったのではないかと思えて来る。
持病で亡くなったと聞いていたけど、その気配を感じたことはなく、本人は風邪を引いたことすらないと笑っていた。
どういった経緯で亡くなって、持病という説明に行き着いたのか不透明だけど、夢にまで出てきて予言したのだ。
あの時の涙……助けを求めているようにも感じられた。続けて見るのには、何かメッセージがあると思えてならない。
だから、日南先生の授業を選択している綺原さんに理由を説明して、今日の約束を取り付けてもらったのだ。男子高校生が一人で押しかけるより女子のいる方が、日南先生も快く承諾してくれると思ったから。
「先生って休みの日何してんの? 彼氏は?」
「女性に向かって、そういう発言をセクハラって言うのよ」
「綺原、何か怒ってんのか? 最近、俺に厳しすぎねぇ?」
「あら、初めからだと思うけど」
「……ああ、確かにな」
彼らのやり取りに目を丸くしたあと、日南先生がぷっと笑みをこぼす。目がなくなって、口角がキュッと上を向く。
大人の魅せつけは皆無で、逆に少女のように無邪気だ。
やはり、この間僕の前に現れた人物は彼女じゃない。
すぐに返事がして、黒のノースリーブに茶色のスカート姿で日南先生が顔を出した。学校での雰囲気と少し違って、より大人の女性が漂っている。
リビングに通されて、グラスに注がれた氷入りのオレンジジュースが出された。
「菫先生って、実家から通勤してたんですね」
「ずっとここに住んでるの。結芽高に近いから、一人暮らしするのはもったいなくて。母と二人で住むには、広すぎるんだけどね」
視線を向けた写真立てには、幼い女の子と父親らしき若い男性が頬を寄せ合い笑っている。
八月十八日は、実際に日南菫が亡くなった日だ。こうして彼女と会っていると、冷たい人形のように横たわっていた姿は夢だったのではないかと思えて来る。
持病で亡くなったと聞いていたけど、その気配を感じたことはなく、本人は風邪を引いたことすらないと笑っていた。
どういった経緯で亡くなって、持病という説明に行き着いたのか不透明だけど、夢にまで出てきて予言したのだ。
あの時の涙……助けを求めているようにも感じられた。続けて見るのには、何かメッセージがあると思えてならない。
だから、日南先生の授業を選択している綺原さんに理由を説明して、今日の約束を取り付けてもらったのだ。男子高校生が一人で押しかけるより女子のいる方が、日南先生も快く承諾してくれると思ったから。
「先生って休みの日何してんの? 彼氏は?」
「女性に向かって、そういう発言をセクハラって言うのよ」
「綺原、何か怒ってんのか? 最近、俺に厳しすぎねぇ?」
「あら、初めからだと思うけど」
「……ああ、確かにな」
彼らのやり取りに目を丸くしたあと、日南先生がぷっと笑みをこぼす。目がなくなって、口角がキュッと上を向く。
大人の魅せつけは皆無で、逆に少女のように無邪気だ。
やはり、この間僕の前に現れた人物は彼女じゃない。



