消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる

 六月に引退したばかりの部活へ来るのは、留年でもしたようで中途半端な気持ちにさせられる。約二ヶ月振りの道着と弓矢は、乱れた精神を統一させてくれた。

 強く矢の手を引いて、狙い、放つ!
 パンッと紙鉄砲を思い切り振ったような音が鳴り、二本目の矢は的のすれすれに刺さった。

「よしっ!」

 部員の掛け声さえ懐かしく感じる。弓を置く僕の元へ、予想通りに綺原さんが歩み寄って来た。

(そよぎ)くん、どうかした? なんだか、今日は狙いが少しズレてる」

 指摘通り今日の的中率は低い。なかなかない絶不調だから、余計目に付いたんだろう。

「朝からずっと様子がおかしいようだけど、何かあった?」

 二ヶ月のブランクはまあまあ大きい。弓の引きは体がやっていたからいいとして、狙いにはどうしても多少のブレが生じる。
 顧問の先生に見られていたら、どうしたのかと根掘り葉掘り問われそうだ。

「少し感覚が鈍ってるのかな。早く取り戻さないと」
「おかしな梵くん。まるで、何ヶ月も休んでいたみたいな言い方ね」

 綺原さんは勘が鋭い。何か言いたげな表情をする彼女から距離を置いて、精神を統一する。

 前と同じことを繰り返していれば、何とかやり過ごせるだろう。
 両親や教師の顔色を伺って、生徒会長と部長をこなして、学年首位をキープするために勉強して……。