ふふっと艶っぽい声が落ちる。日南先生がしない笑い方だ。髪を耳にかける手つきとか、ねっとりとした唇の開け方も。
「夢だと思うなら、夢なんじゃないかな。現実だと思うなら、梵くんにとってこれが現実になるのよ」
わけの分からないことを言いながら、漕いでいたブランコからピョンと飛び降りた。
それから、トン、トンと靴を鳴らして、僕の真正面に立つ。
「前に言ってた話したいこと。まだ、話してなかったよね」
ちょうど街灯が当たるところで、向き合う影が重なった。
綺原さんを呼ばないと。頼む、出てきてくれ。心の中で唱えてみても、彼女は現れない。
気持ちはコントロール可能でも、人物の操作は出来ないらしい。
「先生ね、もうすぐ死んじゃうの。だから、梵くんと一緒にいたいのよ」
「……やめて下さい」
タイムリープが起こる前と、同じことを言っている。
遠くで犬の遠吠えが聞こえた。細かい演出だと思いながら、ふと疑問が過ぎる。
これは本当に夢の中なのか?
華奢な手が、僕の手をそっと包み込む。柔らかな感触のなかに、しっかりした大人の厚みがある。それが妙にリアルで、ごくりと唾を呑む。
「八月十八日、私は死ぬ。夢だと思う?」
頬を伝う一筋の光が、きらきらと輝きを放つ。
宝石箱をひっくり返したような空から、幾つもの星屑が落ちてくる。一瞬にして僕らの姿を消し去ると、目の前は完全にショートした。
「夢だと思うなら、夢なんじゃないかな。現実だと思うなら、梵くんにとってこれが現実になるのよ」
わけの分からないことを言いながら、漕いでいたブランコからピョンと飛び降りた。
それから、トン、トンと靴を鳴らして、僕の真正面に立つ。
「前に言ってた話したいこと。まだ、話してなかったよね」
ちょうど街灯が当たるところで、向き合う影が重なった。
綺原さんを呼ばないと。頼む、出てきてくれ。心の中で唱えてみても、彼女は現れない。
気持ちはコントロール可能でも、人物の操作は出来ないらしい。
「先生ね、もうすぐ死んじゃうの。だから、梵くんと一緒にいたいのよ」
「……やめて下さい」
タイムリープが起こる前と、同じことを言っている。
遠くで犬の遠吠えが聞こえた。細かい演出だと思いながら、ふと疑問が過ぎる。
これは本当に夢の中なのか?
華奢な手が、僕の手をそっと包み込む。柔らかな感触のなかに、しっかりした大人の厚みがある。それが妙にリアルで、ごくりと唾を呑む。
「八月十八日、私は死ぬ。夢だと思う?」
頬を伝う一筋の光が、きらきらと輝きを放つ。
宝石箱をひっくり返したような空から、幾つもの星屑が落ちてくる。一瞬にして僕らの姿を消し去ると、目の前は完全にショートした。



