目が覚めたら、部屋のベッドで眠っていた。慌てて開けたカーテンの向こうには、黒とは無縁の青空が広がっている。
 その美しい光景を眺めながら、僕の左頬は雨のように濡れていた。

 この記憶は、いつか消えてなくなってしまうのだろう。



 知らなかった。
 花笑(はなえ)む君が見つめる先に、いつも僕がいたこと。
 気付けなかった。
 君が手を差し伸べてくれていた意味。

 この学校の一番天国に近い場所で、君と僕は出会っていたんだ。

 虹色の雨が降り注ぐ中、強く繋いだ手を思い出した。
 だから今度は、もう間違えないと胸に刻む。

 彼女と生きる時間を取り戻すために。