ふたりきりに戻った森は、とても静かだ。

「魔女。こどもがこどもは、へん?」
「ここには、私とおまえしかいない。こどもは一人だけだ。困ることはないだろう?」

「……そうだね。ふたりきりだから、へんじゃないね」

 こどもは頬をゆるめて笑う。
 魔女はこどもを見下ろし、ふむと鼻で息をつく。

「それにしても、あの子に比べて、おまえのシャツはずいぶんと小汚いね。そろそろ洗い時だ」
「ええ? 魔女はその服、洗ってないよ」
「魔女は汚れないのさ」

 ずるいなぁ、いいなぁとボヤくこどもから、魔女はシャツをはぎとった。
「さむいよ!」


「――おまえ、これは?」


 こどもが首からさげたネックレスを、魔女は指にひっかける。
「なに? しらない。ずっとしてた」

 魔女はだまってしまった。

 こどもは、気にしたこともなかったネックレスのプレートを眺めてみる。
 銀の板に、おかしな模様が彫りこまれている。

 洗い桶を河辺へ運んできたこどもは、シャツを足で踏んで跳ねるうちに楽しくなって、ネックレスのことなどすっかり忘れた。

 けれど魔女は椅子を鳴らして揺られながら、ずっと無口だった。