「聞いたことない場所だな。どうしてこの街に来たんだ?」


 皆渡くんがまた訝しげな目を向ける。きっとまだ完全には信用していないのだろう。ルカさんがわたしを助けてくれたすぐあとに加害者が殺されたのだから仕方がない。

 それに皆渡くんの言う通り、そんな遠くからなぜこの冬咲市に来たのだろう。ここは都市部でもなければ観光地でもない。三千人程収容できるイベントホールはあるけれど、それだけだ。際立った特徴なんてなにもない。


「敢えて言うなら、探し物だな」

「なにを探してるんですか?」


 すかさずわたしも問い掛ける。


「……ナイショ」


 ルカさんが口の前に人差し指を立ててくすりと笑う。またからかわれたように思えて、わたしは少しむっとする。