「はじめまして、ルカさん。緋莉を助けてくれてありがとうございました。わたしは宵月瑞花。こっちは彼氏の皆渡蘭雅です」
丁寧に頭を下げる瑞花。それに倣うように皆渡くんが「どもっ」と短く挨拶をして続けた。
「あんたハーフなのか? 肌白いし、髪は銀色だし、それに目も少し紅い」
皆渡くんの言う通り、ルカさんの髪は染めているわけではなさそうだし、紅い瞳もカラコンではないくらい自然だ。だとしたら外国人か、あるいはハーフなのかもしれないなとわたしも以前から考えていた。
「詳しい血筋は分からない。少なくとも十二ヶ国以上の混血だそうだ」
それを聞いて納得した。だからこの人はひとりで人種や国境、さらには性別まで越えているように見えるんだ。
言い方を変えれば、どこか人間離れしている。わたしもたまにハーフみたいだと言われることはあるけれど、お父さんの名は晄でお母さんは夜凛子だし、歴とした日本人だ。
「どこから来られたんですか?」
と、瑞花が質問を重ねた。
「トランシルヴァニアだ」
耳慣れない地名を返された瑞花が、「へえ……」と語尾に疑問符を付けたようなトーンで声を漏らす。おそらく頭の中で場所を検索しているのだろう。
わたしも詳しくは知らないけれど、北欧だったか東欧だったか、とにかくヨーロッパだったはずだ。