「こ、これは料理に使うお酒です! だっておつかいの途中でレジに並んでたらあなたが見えたから、それで咄嗟に袋を断っただけです! 飲んだりなんかしません!」


 浅桜くんにもあとで訂正しておかなくちゃ。でもほんとに見られたのかな。
 もし気づいてなかったら、こっちからわざわざ暴露するのは損だ。
 いや、気づいてないわけないか。


「おつかいの途中なのに、わざわざ追いかけてきたのか?」

「……っ!」


 あぁ、もう、さっきからなに? なんでこんな癪に障ることばかり言うの? 確かに追いかけてきたのは認めるけど、いちいち言わなくていいじゃない。それにこの余裕ぶった表情がわたしの羞恥心と苛立ちにさらに拍車をかける。


「べ、別にそんなんじゃないし!」

「そう怒るな」


 冷笑と共にそう言われてはっとする。恩人に対してなんて態度だ。馴れ馴れしすぎる。かといって一度上昇した熱は簡単に冷めない。


「だって、あなたが人をからかうようなことばかり言うから!」


 ルカさんに向かって強気で言い返したそのとき。


「お待たせしました」


 赤いバラの花束を抱えた店員さんが奥から戻ってきた。