――まさか。
見てはいけない。瞬時にそう自分に言い聞かせてみたけれど、わたしの視線は吸い込まれるように一点を捉えていて逸らすことができない。
あぁ、どうしてこうなるのだろう。もしも振り返らずに足を進めていれば、出会うことなんてなかったはずなのに。
胸の奥から瞬く間に複雑な想いが去来して、まるで時間がスローモーションのようにゆっくりと流れていく。
その銀色の髪と紅い瞳に目を奪われていると、思わず声が漏れた。
「ルカさん……」
まるで周りの世界がセピアに染まり、その姿だけが鮮やかに映し出されているみたいだ。どうしてわたしはこんなにもルカさんに憧れてしまうのだろう。そんな自分にさえ戸惑いを覚えてしまう。
ルカさんに続いて店の奥から姿を見せたのは、明るい色の長い髪をひとつに束ねた店員さんらしき女性。
少し赤く染めた頬に両手をやるその仕草は、明らかに色めき立っている。
女性がルカさんへ声を掛けた。
ふたりは少しの間言葉を交わすと、その女性だけ小走りで店の中へと引き返していった。