……無意味な妄想に、深いため息を吐く。

 会えない相手のことを考えたって、どうしようもないのに。無駄にやきもきするだけなのに。

 事件に関してはわたしのところへ警察が来たわけでもない。
 そもそもわたしに直接的な関係はない。

 だけどまったく無関係かと言われれば自信をもって頷けないので、捜査状況は毎日ネットで追っている。けれど依然として犯人の手掛かりは掴めていないようだった。

 ルカさんの無事も確認できているし、もうあの日のことは忘れてしまったほうがいいのかもしれない。

 ルカさんは、『夜が近づけばまた会える』なんて言ってくれたけど、あれはきっとわたしをあしらうための社交辞令だったのだろう。それを真に受けるくらいにわたしはまだまだ子どもということか……。

 胸の内で膨らんでいく卑屈な感情から逃げるように、意識を現実へと戻した。思考することに疲れてなんとなくレジの行列から外に目を向ける。

 頭を空っぽにして大きなガラス窓の向こうを行き交う人達をぼーっと眺めていると、つい「あっ」と間の抜けた声が飛び出した。