冷蔵庫を閉めると、シンク下の戸棚を開けて、立ち並んだ瓶の中からみりんと料理酒を取り出す。

 しかし、思った以上に料理酒の中身が少ない。

 おせちの準備は昨日からしているから、その時に使ってしまったのだろう。おせちは普段の料理に比べて調味料を沢山使うから仕方ない。


「お母さん、お酒もう少ないね。さっき買ったっけ?」

「あぁ、ごめんなさい。すっかり忘れてたわ。昨日たくさん使っちゃったのよ。せっかく買い出しに行ったのに」


 お母さんははあっとため息をつくと、エプロンを外そうとした。


「いいよ。わたしが行ってくるから」


 今わたしひとりキッチンに残されるよりも、お母さんが残るほうがきっといい。


「そう? それじゃあ悪いけどお願いするわ」


 お母さんから財布を受け取って、一旦自分の部屋へと戻る。クローゼットからコートを手に取りふと窓の外を見てみると、空を暗い雲が覆っていた。


 雨……ううん、寒いから雪が降りそうかな。


 念のため傘を手にして家を出ると、空は一層暗くなっていて、どんよりとした暗い景色の中を微かに粉雪がちらつき始めていた。でもこれくらいの雪なら、傘を差すほどではない。