ゆっくりとルカさんの方へ振り向いて、視線をあげる。
「……明るい場所は苦手だ」
ルカさんは、寂しそうに月を見上げながら言った。
「……眩しさで、明日さえ見失ってしまう」
もしかして言葉を濁しているだけで、ほんとうはわたしみたいな面倒な奴と関わりたくないと思っているのだろうか。
……そうだよね。わたしのせいで酷い目にあったのに、また会いたいなんて思うはずがない。
喉の奥が熱くなってきて、息が詰まりそうで胸が苦しい。
なんだろう、この気持ち。
愛おしい? ううん、きっとそうじゃない。切ないような淋しいような、不思議な安心感……。胸の奥に暖かく灯った盲目な感情の正体が、わたしには分からない。
けれど、ルカさんの憂いを帯びた紅い瞳のまなざしは、不思議とわたしの心を落ち着かせてくれる。
もし、次の言葉が最後になったとしたら……。このまま会えなくなってしまったとしたら……。
でも――、
「夜の気配が近づく頃に、また会えるかもな」
ルカさんは柔らかく微笑みながらわたしの頭をひと撫でして、闇夜のしじまへと歩き始めた。
言葉の意味が理解できず、頭の中を困惑が駆け巡る。わたしはただ立ち尽くしたまま、徐々に離れて小さくなっていく背中を、いつまでも、いつまでも見つめていた。