それより、銀髪さんにいくら不躾な態度をとられようとも、助けてもらったお礼はちゃんとしたい。
「あの……今度、改めてお礼がしたいので、よ、よければ連絡先を教えてもらえませんか?」
ちょっとどもった。しかも最後は早口。お礼をするために連絡先を聞くなんて当然のことなのに、どうして緊張するのかな。はぁ……コミュ力が欲しい。
あぁ、そうか……。今さっき蓮崎くんから友達追加していいか訊かれて、少し憂鬱になったからだ。同じ想いをしていないかどうか、きっとわたしも不安なんだ。
「子どもが礼なんて気にするな。食事のついでに通りがかっただけだ」
……やっぱりこうなった。
出会ったばかりで連絡先なんて聞かれて迷惑だったかな。なにかあるとすぐに男性が悪者にされる今の世の中では、大人は女子高生に連絡先とか教えたくないのかもしれない。
「いや、でも……ですね」
なんだかペースが乱れる。会話のテンポが掴めない。次の言葉を手繰り寄せようと言葉を浮かべてみるけれど、なにを言ったところでこの人は宙を舞う木の葉のようにひらりと躱してしまいそうだ。
「冷えてきたな。またあんな目に遭われたら寝覚めが悪い。家まで送ってやる」
相変わらずルカさんは冷静だ。
冷たい態度とは裏腹な紳士的な振る舞いと優しさに、胸がとくんと小さく弾んだ。
かっこいい……素直にそう思うわたしがいる。