「ほら、母親が心配してるんじゃないのか?」


 まだ言い返し足りないけどほんとうにお母さんかもしれないので、スマホを取り出してメッセージを確認する。


『そんなに気にしなくても大丈夫だよ。また別の映画を観に行こう。それより気分はどう?』


 待ち焦がれていた浅桜くんからの返信だった。

 心に花が咲いたように胸がすっと軽くなる。くふふっと愛しさが滲む白い息を宙に落とすと、スマホがまた通知音を響かせた。


『友達追加しといて』


 誰かと思えば蓮崎くんだ。昨日はスタンプしか送ってないし、あまり話したこともない相手を追加するのは気が進まない。けれど、クラスメイトである以上無視するわけにもいかない。

 正直面倒くさい……。そう思っている自分に気がついて、ちょっとだけ自己嫌悪する。嫌な子だな、わたし。


「……そろそろ帰ったほうがいい。今日は満月だ。狼男がでるかもしれないからな」


 この人はどこまでわたしを子ども扱いするのだろうか。

 浅桜くんにはあとでゆっくり返信しよう。蓮崎くんにはとりあえず友達追加の表示をタップしておいた。