「あの……わたしを家まで送ってくれたのも、あなたですよね?」

「…………」


 銀髪さんは気怠そうに煙草を吹かしたままなにも答えない。


「……わたしの家、どうして知ってたんですか?」


 会ったこともないわたしの家を知っていたとしたら、それはそれで怪しい。

 失礼なことを言ったと反省した矢先に訝し気な目を向けると、銀髪さんは少し言いづらそうに口を開いた。


「あんた、学生証は?」

「えっ? いつもカバンの中に入れてますけど。割引に使えることもあるし」

「そこに住所は?」

「一応記入欄があるので、自分で書きましたけど……って、まさか」

「それだよ。学生証で確認したんだ。あのまま放っておくわけにもいかないからな」


 こ、この人、わたしの学生証を見たの! ということは、勝手にカバン開けたの? 女子のカバンを? 男が勝手に? そんなことが許されていいの?


「ちょ、ちょっと、それはないんじゃないですか? 勝手に持ち物を調べるなんて」

「自惚れるな。お子様に興味なんてない」


 ――おこさまっ!? 助けてもらったのはうれしいけど、そんな言い方しなくてよくない!?


「もっと別の方法とか考えてくれてもいいじゃないですか!」

「なら気を失ってるうちに部屋へ連れ込まれたほうがよかったのか?」

「それはもっといやです! ていうか駄目です!」


 ふっと笑う銀髪さんに毅然とした態度で言い放ち、拒絶の意を伝える。

 でも、わたしの意識がない中で銀髪さんにできることは限られている。

 言われた通りべつに見られて恥ずかしいものが入っているわけでもない。それにあの場に放置されるのも、家に連れ込まれるのもいやだ。そう考えると彼の対応は正しかったのかもしれない。