食卓に用意されていたのはハンバーグだった。わたしと瑞花の大好物だ。瑞花のお父さんが急遽外で夕食を済ませてくることになり、ひとり分のおかずが余るとこだったらしい。
久しぶりに宵月家のハンバーグにありつけるなんて運がいい。昨日はあまり食欲がなかったけれど、今日はおいしい夕食を堪能できそうだ。
「「いただきまーす」」
瑞花と声を揃えてさっそくハンバーグにナイフを入れた。
ニンジンのグラッセやコーンの甘い香り、玉ねぎやお肉の香ばしい匂い、さらにはあふれ出る肉汁が食欲を掻き立てる。
しかし、フォークで突き刺したハンバーグを口に運ぶと奇妙な違和感を感じた。
――あれ? お肉って、こんな味だったっけ?
「おいしい! おねえちゃん、今日のハンバーグ最高!」
瑞花はいつものように大はしゃぎでハンバーグを頬張っていた。
それに倣うようにわたしもふた切れ目に手をつける。
やっぱり違う。いつもとひき肉が違うのかな?
でも何度も食べた瑞花の家のハンバーグが、急にここまで変化するだろうか。
わたしはもはやおいしくないとさえ感じてしまっている。
こんなの、お肉の味じゃない……。