唐突な質問に戸惑っていると、瑞花が起き上がり、あぐらをかいてこちらに体を向けた。
「だって、かっこよかったんでしょ?」
確かに全然気にならないと言えば嘘になるけど、あんな恐ろしい状況で好きも嫌いもない。
でも思い返せば恋心とは関係なく、銀髪さんの背には他の誰からも感じたことのない安心感があった。それは確かだ。それにあの人とはきっとまた会えるという変な自信もある。運命を感じたとか、そんな痛い話ではなくて。
「そりゃあ心配だしお礼もしたいからまた会いたいとは思うけど、初めて会った人を好きになるわけないよ。わたし、そんなに軽くないんだけど」
浅桜くんのことが好きなのに、他の男性が気になるだなんて、そんな自分は許されない。
「さっき銀髪さんのこと話すとき、緋莉の声が妙に明るく感じたんだよね。悲惨な目に遭ったのに、まるで待ち焦がれてた人に出会えた、みたいな。まあシチュエーション的に分からなくはないけど」
片方だけ口角をあげて、小悪魔のような微笑を見せる瑞花。
だけど今のわたしは恋心よりも、罪悪感で胸が締め付けられている。
瑞花の指摘に銀髪さんの顔を思い浮かべると同時に、結花さんが扉を開けて「できたよー」とわたしたちを呼びにきてくれた。
結花さん、ナイスタイミングだ。