うん、おいしい。生焼けが心配だったけど、逆に少し焼き過ぎたかも。なんかぼそぼそしてるっていうか、ジューシー感が足りない。

 あともう一羽焼かなくちゃいけないし、みんなの感想を聞いて不評だったら次で挽回しよう。

 切り分けたお肉を小皿に乗せてフォークと共にダイニングテーブルへ運び、今やおしゃべりに夢中なサラダ班に声をかける。


「できたよ。みんなも味見してみて」


 解体されたチキンを前に、「すごい!」「おいしそう!」といった声が飛び交う。みんなの口にも合うだろうか?

 各々が調理の手をとめて、笑顔でチキンを口へ運んでいく。

 反応が気になって観察していると、あろうことかみんなチキンを数回咀嚼しては、次々に眉をひそめて首を傾げ始めた。


 ――そんなにまずかった?


「緋莉ぃ、これもうちょっと焼いたほうがいいんじゃない? チキンにしてはレア過ぎるって」


 ――わたしは焼き過ぎだと思うんだけど。


 フォークを手にしてもうひときれ口に運ぶ。

 言われてみると確かに生っぽい? いや、そんなことはない。火を入れすぎてお肉の風味が落ちてしまっている……ような気がする。


「やっぱりフライパンだと難しいよね」


 瑞花がふふっと笑いながらわたしに小皿を返した。
 残されたチキンをよく見てみると、確かに中はまだ赤い。

 けれど、わたしはこれでもおいしかった。
 わたしの舌ってそんなに馬鹿だったのかな。
 味音痴ってやつ?
 そんなのいやだ。