「だめ、瑞花。わたし無理、心がもたない」

「なに急に? どうしたの?」


 瑞花がへらっと笑って顔を向ける。


「今朝わたし六時前に目が覚めたの。そっから心臓どきどきしっぱなしだったのに、また同じ朝が来ると思うとちょっと憂鬱。それにあの状態で映画観ながら二時間隣同士だなんて、頭に内容入ってこなかったかも……」


 デートの度にこんな想いをするくらいなら、いっそ誰も好きにならずに生きていきたい……と、瑞花の前でいじけてみせる。

 うなだれてまた大きくため息を吐くと、瑞花がなにかを閃いたように両手をパンっと鳴らした。


「だったらさ、いっそ四人で遊ばない? わたしと皆渡くんも一緒に」


 ――え? 神様じゃん。 


「いいの? ほんとにいいの? 瑞花!」


 瑞花の手を握って、思わず顔を近づける。


「ちょ、緋莉近いって」


 瑞花が顔を背けて手を振り解いた。
 あぁ、今ので瑞花の気が変わっていませんように。


「映画の内容覚えられなきゃ、そのあと感想言い合ったりできないでしょ? そんなの空気悪いよーきっと」


 とどめを刺された。
 お花畑をスキップしていたところで突然ヘッドショットされた気分だ。口から魂が洩れているかもしれない。