「出てきたよ。被害者の情報」
いつになく真剣な瑞花の声。深呼吸してからゆっくりとモニターを見ると、見覚えのある男達の顔が年齢入りの名前と共に並んでいた。
菊島 雷(二十二歳・男) 須藤 大貴(二十二歳・男)
大杉 昌也(二十一歳・男) 松岡 仁(二十歳・男)
蜂屋 すみれ(十七歳・女)
右耳にずらっとピアスのある男、首に入れ墨がある男、坊主頭の男……。間違いない、殺されたのは昨日わたしに絡んできた男達だ。
「やっぱり……そうだ」
「これって、緋莉に絡んできた人達?」
「……うん」
「この女の子もいたの?」
「ううん、この子は見てない」
人相の悪い被害者達の中でひとりだけ浮いた印象を持つ、蜂屋すみれという真面目そうな女の子。たったひとつしか歳の離れていない女の子が近所で、しかも昨夜わたしが居た場所で殺されたと思うと、やりきれない感情が込み上げてくる。
「気にしちゃ駄目だよ。緋莉は悪くないんだから」
「……うん、ありがとう」
わたしが気を失った後に一体なにがあったのだろう。被害者の中に助けてくれた銀髪男性の顔がないのが救いだ。
不謹慎ながらほっと胸をなでおろした瞬間、一抹の不安が頭をよぎる。
だとしたら、まさか、あの人が犯人ってことも……。
「助けてくれた人は?」
瑞花の言葉に心臓が跳ねる。ごまかすように慌てて紅茶に口をつけた。
「う、うん、大丈夫。無事みたい」
「そう、よかった。でも緋莉、汗びっしょりだよ? どうしたの?」
言われて額に手の甲を当てると、じとっとした感触がつたう。
「えっと、この部屋ちょっと暑いかな」
白々しい言葉だなと、自分でも思う。
「……ねえ緋莉。誤魔化さなくていいからさ。昨日のこと、最初から全部話してよ」
ローテーブルに身を乗り出した瑞花が、鋭い眼光でわたしに迫る。
この目には弱い。瑞花とは幼稚園で出会い、それからずっと姉妹のように一緒だった。大切な親友に隠しごとはできないし、したくない。
「あの……誰にも内緒にしてくれる?」
聞かなくても瑞花の返事はわかっていたけれど、話の前置きとして返答を待つ。
「わたしが緋莉の秘密を誰かに漏らしたことある? たとえば中学二年生のとき、緋莉が真っ黒な――」
「――待って待って! わかった。ちゃんと話すから」
危うく黒歴史を掘り起こされるとこだ。
瑞花のいじわるで少し和らいだ空気の中、わたしはひと呼吸おいて昨夜起きたことを話した。