でも、なにもわからないまま不安でいるのもつらい。そっちのほうが心を削ってしまうかもしれない。


「うん……大丈夫。教えて」


 小さく返したわたしの声に、瑞花は少し悩んだそぶりを見せてから口を開いた。


「血が……足りないの」


 ――えっ?


「被害者は全員、頸動脈から出血した状態で倒れてたんだけど、他に外傷が一切なかったらしいの。でも五人とも失血死してる割に、現場の血痕が少な過ぎるんだって」


 背筋にぞくりと悪寒が走る。


「それに被害者からは抵抗したり争ったあとも見えないらしくて、殺されたのは柄の悪い連中ばかりなのに、そんなのおかしいって書いてあった。凶器も見つかってないみたいだよ」


 もしも被害者があの人達だとすると、それは確かに腑に落ちない。彼らはあの銀髪さんに対して容赦なく殴りかかっていた。あんな乱暴な奴らが殺人犯相手に抵抗もしないなんて考えられない。


「この前の事件も死因は失血死だったんだけど、その失われた血液の行き場がわからないから、ネットでは宇宙人の仕業とかって噂になってるらしいよ。その、キャトルミューティ……なんとかみたいだって」


 宇宙人はどうかと思うけど……。もしかして殺されたのはまったく別の人達なのだろうか? 銀髪さんの安否も気になるし、やっぱりちゃんと確認したほうがいい。


「瑞花……被害者の顔写真って探せる?」


 被害者であれば顔がニュースに載せられるだろう。だけどネットで確認するほうが早い。


「まあ、犯人じゃなくて被害者の情報はネットにも色々出回ってるけど、ほんとに大丈夫なの? 絡まれたとはいえ、知ってる顔だったらいやでしょ?」

「でも……わたしを助けてくれた人が、あれからどうなったか分からないの」


 瑞花は少し躊躇うような顔でパソコンを操作し始めた。部屋の中にキーボードの無機質なタッチ音が響く。