「やっぱりどこか具合悪いの?」
「ううん、ごめんね。そうじゃないの……」
肩で息をしながら部屋へ戻ると、トレイを持った結花さんが姿を見せた。
「緋莉ちゃん大丈夫?」
ティーポットに入った紅茶の香りが部屋を充たし、ふわふわのケーキがローテーブルに置かれる。
「はい、大丈夫です。今日はなんだか生理痛がひどくて……」
咄嗟に嘘をついた。
「女の子なんだから無理はしちゃだめよ。お薬持ってこようか?」
「いえ、ほんとに大丈夫です。ありがとうございます」
「そう、ならいいけど」
にこっと会釈して部屋を出ようとする結花さんに、わたしは続けて声をかける。
「シフォンケーキですか?」
「そうよ。イブはデートで作れなかったから、今日作ったの。緋莉ちゃん来てくれて丁度よかった」
結花さんはわたしが来ると、いつもその日作ったお菓子を振る舞ってくれる。パティシエの専門学校に通うほどお菓子作りが好きな結花さんが作るスイーツは、甘過ぎずわたし好みだ。
「今日もおいしそうです。ありがとうございます」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「おかわりもあるからね」