緑地公園の南出入口に差し掛かると、普段は目にしない人だかりが目に留まった。こんなに人がいるなんて珍しい。公園の中に人が次々と吸い込まれるようにして駆けていく。

 ふいに昨夜の暴行が頭をよぎる。

 甦ってくる恐怖心を頭を軽く振って落とすと、またすぐ別の不安が浮かびあがってきた。

 まさか、あの後銀髪男性になにかあったのだろうか。

 すぐに不安は予感へと変わり、緑地公園に足を向ける。

 おそるおそる人混みの隙間をぬって奥へと進んでいくと、不吉な予感を膨張させるように動悸も激しくなっていく。

 男達に絡まれた辺りまで来ると、人混みが減って途端に視界が開けた。そこには映画やドラマでしか見たことのない黄色の規制線が張られていた。

 冷たい手がそっと心臓に触れたような、冷やりとした感覚が襲いかかってくる。

 胸が苦しい。

 にじり寄るように規制線の手前まで近寄ると、思わず「ひっ」とうわずった声をあげた。

 ブルーシートで隠しきれないくらいの、ペンキをぶちまけたような赤黒い染み。周囲の重々しい空気から伝わってくるその正体。


 これは……。


 ――血痕だ。